ウイルス感染では白血球が上昇or減少?

ケアマネ

平成27年度ケアマネジャー試験問題より

第26問 次の記述について、より適切なものはどれか。3つ選べ。


1 CRP(C反応性たんぱく質)は、感染症などによる炎症の程度を示す。
2 胸部X線検査は、結核などの呼吸器疾患だけではなく、うっ血性心不全などの心疾患の診断にも有用である。
3 ノロウイルス感染症では、下痢などの症状がなくなれば、感染力はない。
4 ウイルス感染では、白血球が上昇する。
5 尿検査は、糖尿病や腎臓病だけでなく、尿路感染症の診断にも有用である。

正解は↓↓↓

答えは、①②⑤

なんとなくウイルスに感染すると免疫が働いて、白血球の数が増えるのではないかと思いますが、実は違いました。その理由は、ウイルスと細菌に対する免疫の仕組みが違うからでした。

そこでなぜウイルス感染では、白血球が上昇しないのかを調べてみました。

 

〇白血球とは何なのか
白血球は生体防御と自己とそうでない非自己の認識を担当する細胞群です。白血球は大きく分けて白血球には大きく分けて5種類あり、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球、がありその役割も異なっています。
・好中球(全体の約50~70%)
白血球の多くを成しているのが好中球です。血管外にいる細菌などの異物のもとに駆けつける機能(遊走)と、それらを取込んで殺菌する機能(貪食)を持っています。
・好酸球(全体の約2~5%)
好酸球は、アレルギー反応や寄生虫疾患で上昇します。好中球と同じように細菌や遺物に遊走し貪食しますが、好中球ほど食作用は強くありません。
・好塩基球(全体の約1%以下)
好塩基球はさまざまな生体の免疫機能に関与していると考えられていますが、はっきりとした存在意義は未だ研究途上です。蜂に刺された時などに生じるアナフィラキシーショックなど即時型のアレルギー反応などに関与しているとされており、血管拡張や組織での炎症を引き起こします。
・単球(全体の3~6%)
単球はマクロファージとなり、好中球よりもやや長い時間血中に存在して、細菌だけでなく古くなった不要な細胞も好中球より貪食し除去します。
・リンパ球(全体20~40%)
リンパ球は特にウイルスなどの小さな標的を攻撃する役目があります。骨髄やリンパ節、扁桃腺などのリンパ器官といわれる部位に多量に存在しています。リンパ球は、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞からなります。

〇ウイルスに感染すると 
ウイルスが細胞内に侵入すると細胞の力を利用して分裂して増えていきます。ウイルスに侵された細胞をナチュラルキラー細胞が非特異的にやっつけます。非特異的というのは選ばずにという意味で、特異的というのはそれだけを選んでという意味です。侵入してきたウイルスだけを選んで攻撃するのは特異的に攻撃するといいます。無差別に対応するだけでは、対応が出来ないのでB細胞や樹状細胞が司令官役のヘルパーT細胞に侵入してきたウイルスの情報を伝えます(抗原提示)。するとヘルパーT細胞はTfhとTh1の二つの細胞になります。TfhはB細胞を形質細胞に変えて抗体を作れるようにして、どんどん抗体を作り、ウイルスを特異的にやっつけます。またTh1は侵入してきたウイルスを特異的にやっつけられるCTL(細胞障害性T細胞)を組織してウイルスをやっつけます。

〇細菌に感染すると
一方、細菌が体内に侵入すると。好中球やマクロファージという細胞が細菌を非特異的に食べます(貪食します)。また、補体というたんぱく質が細菌にひっついて好中球やマクロファージが食べやすくします(オプソニン化)。それによりどんどん細菌を食べてやっつけていくのですが、細菌を食べるだけではやっつけることが出来ないものもあります。そこで、ヘルパーT細胞に助けを求めにいきます。マクロファージ、樹状細胞、B細胞などが細菌の情報をヘルパーT細胞に伝えます(抗原提示)。そうするとヘルパーT細胞はウイルスの時と同じようにTh1とTfhの二つに分かれます。Th1はマクロファージに力を与えて今までやっつけられなかった細菌もやっつけられるようにします。また、ThfはB細胞を形質細胞に変化させて抗体を作れるようにします。この抗体は侵入してきた細菌だけに特異的に引っ付いて、食べやすくします(オプソニン化)。また、この抗体は細菌の毒性を中和することもでき、例えば蛇にかまれた時にうつ血清には、抗体が入っています。
 
 このようにウイルスと細菌では免疫の仕組みが違います。ウイルスにはリンパ球が一方、細菌には好中球が中心に活躍します。

 血液中の白血球の数は、その大半を占める好中球の数の増減にほぼ一致します。白血球の数が上昇するときは、細菌に感染したときということが理解できました。

ウイルスといえば毎日耳にするコロナウイルス。日本感染症学会のホームページでも臨床検査においては『発症初期の段階では、患者の末梢血白血球血数が正常値或いは減少』と記載されていました。試験問題を深堀していくと日常の生活にもつながっていくと改めて思いました。

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